オリコンの5位から10位にずらりとアニメっぽいキャラが並んでいます。
見ての通り、アニメソングランキングではありません。ちゃんとしたオリコンのCDランキングでのこの光景。えらいこっちゃ。
しかもこれ、アニソンではありません。
ずらっと並んでいるのはモバゲーのソーシャルゲーム「アイドルマスターシンデレラガールズ」のキャラクターソングCDなのです。
このスクリーンショットは4月17日入荷日(いわゆるフライングゲット日)時点。正式発売の4月18日には双葉杏が3位に上ります。
二次元のアイドルが群れなして押し寄せてきたよー。
一応根っこに「アイマス」という基盤があるとはいえ、ケータイでぽちぽちやる、音のないソーシャルゲームのCDがここまで売れるというのはちょっと異例事態。
本家アイマスのアニメオープニング「READY!!」が7247枚でオリコン3位を記録していますが、双葉杏は7594枚。なんだと……?
とはいえ例がないではないんです。
にしたって、オリコンでこの順位売れすぎじゃね!? ゲームのキャラソンですよ?
実はここまで売れているのにはちょっとした理由があります。
1・値段が安い。
一枚700円です。これはシングルCDとしては破格に安い。
じゃあそのぶん手抜きか、というと、そんなことはないです。曲にはアイマスで楽曲提供していたチームも参加しています。
歌は一曲ですが、ラジオ番組を模したオリジナルドラマ「目指せ!シンデレラNo.1!」が8分くらい収録されています。
加えてボーナストラックとして、ゲーム内でのセリフを実際に声優さんが演じているものも収録。そのキャラが好きなら嬉しいところ。
2・ゲーム内カードが付いている
このCDを買うと、ゲーム「シンデレラガールズ」内で使えるキャラクターカードがついてきます。これ目当てで買う人は圧倒的に多いでしょう。
で、ここがミソなんですが……シンデレラガールズのキャラカードは、二枚で特訓することで別カードに進化します。
つまり、進化後のカードが欲しい人はCDを二枚買わないといけない、という仕組み。
これは……孔明の罠か!
とは言ってもそれほどついてくるカードは強いわけじゃないので(※分かる人向けに補足すると、コスト比は高いですが能力はそこまで強くないのでバックメンバー向き)、無理して二枚買うほどでもないです。コレクションしたいかどうかですね。
700円二枚で1400円……普通のシングルの値段と変わらない、と感じさせるあたりが戦略的に巧みです。
とは言え、ゲームプレイヤーも現時点で登録数140万。それらすべての人が買うわけでもないでしょうし、どこまで売れるのか気になります。
今回出た「シンデレラガールズ」のキャラクターを紹介。
・渋谷凛
きりっとした、女子高生。犬が大好き。
・双葉杏
ニート。17歳にして幼児体型の問題児。働かない。動かない。
・三村かな子
自分に自信がないおどおどした子。ちょっとぽっちゃり体型の甘いもの大好き少女。
・高垣楓
25歳。ミステリアスな雰囲気をまとっており、お酒と温泉とダジャレが好き。
・城ヶ崎莉嘉
中学一年生。おねえちゃんのギャルっぽさに憧れるハイテンションガール。どこにいってもカブトムシを見つける。
もちろんキャラを知っている人向けのCDではあるんですが、高垣楓のCDは個人的には、ゲーム一切やってなくてもちょっと興味わいたら一枚買っても損ないんじゃないかなあと思う歌の出来になってます。
で、それはいいんですよ。
問題はニートの双葉杏がオリコン3でいいのか!?って話ですよ。
ニートが日本のトップアイドルに上り詰めていいのか! ……いいか。ちょっと面白いし。
双葉杏はゲーム内で「働きたくないので、CDを出して印税生活を送るためにアイドルをやっている」というダメな設定になっています。
ここで、はたしてCDで印税生活できるのか。
簡単に検証してみましょう。
CDを一枚売る時どう分配されるかを計算します。
まずCDショップが、定価の25から30%を取ります。
次に容器とブックレット代が定価の7から15%。
プレス代が5から10%
これでもう40〜50%ですね。
ここからちょっと面倒なんですが、各方面に支払う金額があります。
まず著作権使用料。JASRACですね。6%支払います。これは決まった数値です。
あくまでも「作った人」であって、「歌った人・演奏した人」ではありません。
その著作権使用料内の7%がJASRACの手数料、残93%が音楽出版社にいきます。
この音楽出版社に行った著作権料のうち、50%が作詞家・作曲家に行き、残り50%は音楽出版社に行きます。
大雑把に計算すると、JASRACがCD定価の0.42%、音楽出版社に2.79%、作詞・作曲家に1.4〜1.5%ずつほど行きます。
これでだいたい50%くらい。容器ブックレット代やプレス代は規模によって変わります。
ブックレットや盤面印刷を減らすことでコスト削減するのもなかなか馬鹿に出来ません。
残り50%が実収入になりますが、当然レコード会社で契約をしていますので、そこが収入として得ることになります。
レコード会社は録音権利を持っているので、そこから印税が発生します。
やっときました! 杏chang、印税の出番だよ!
基本的にはCDの定価の1〜2%がアーティスト印税。何人いても1〜2%です。
作詞作曲の場合も、まんま移動しますね。なので一人作詞作曲をしているバンドだと、メンバーによってもらえる金額の差がえらい違いになります。
まとめてみると……。
・レコード店の収入:25%
・容器代:10%
・プレス代:7%
・著作権使用料6%
※内訳
JASRAC:0.42%
音楽出版社:2.79%
作詞家:1.5%
作曲家:1.5%
・レコード 会社:46%
・アーティスト印税:1〜2%
その他、可視化しない事務所の中抜きもあるかもしれませんが、それは今回は考えず行きましょう。
仮に、双葉杏がこのCDを700円で売ったとしたら、彼女は印税生活できるのでしょうか?
まずは出たばかりのアイドルですし、1%が妥当とします。
700円のCDが、仮に1万枚売れたとします。700万円。結構いい金額動きますね。
その700万円のうちの1%ですから、双葉杏の手元にはいるのは7万円ということになります。
うっ。
い、印税生活するというにはタイトすぎる。
仮に彼女が作詞をしていたとしたら、そこに1.5%加わりますから、17万5千円が収入になります。
お!? これなら悪くない……か?!
しかし。杏は演奏をしていません。演奏をする人に支払う金額を考えるとさらに下がる可能性は高くなります。
演奏に関してはレコード会社の買い取りの可能性もありますが…。
そもそもまず1万枚売らないとこの金額にならないわけで。(4月18日発売時点で杏のCDは7594枚(オリコン集計))
ライブや営業を積極的にやる理由が見えてきます。
ニートが「アイドルで印税生活」するのは相当ハードそうですが、さてどうなることやら。
(たまごまご)